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2007年11月10日 (土)

流れは変わるのか?

草津温泉街からの帰路、名勝として名高い吾妻渓谷に立ち寄りました。

吾妻渓谷は、吾妻川に架かる雁ガ沢橋から八ツ場大橋までの約4kmにわたる渓谷で、
太古の昔、火山が噴きだした溶岩を吾妻川が浸食してできたものと考えられています。

JR吾妻線川原湯温泉駅から、国道146号線沿いに約2kmの遊歩道が整備されており、
手軽なハイキングコースになっています。

紅葉は盛りを過ぎた感じでしたが、流れに沿って狭い道をたどっていくと、
奇石や小さな滝などが次々と現れ、表情豊かな渓谷美を楽しむことができました。

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【吾妻渓谷①】

約50分程で遊歩道の終点に到着。

そんなに険しい道ではありませんでしたが、歩きなれない家人はバテ気味。
仕方なく、車を止めた駐車場へは平坦な国道を歩いて戻ることにしました。

しばらく歩くと、異様に大きな立て看板が。
それを読んで初めて、この地で進められている驚くべき計画を知ることになりました。

なんと、この吾妻渓谷の一部と隣接する川原湯温泉街がすべてが、
ダム建設によって近い将来水没してしまうというのです。

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【吾妻渓谷②】

えっ!何で!と思い、帰宅後少し調べてみました。

建設されるダムの名は、八ッ場(やんば)ダム。
恥ずかしながら、初耳でした。

地元の反対運動が激しい為、「東の八ッ場、西の大滝(紀ノ川)」と呼ばれ、
ダム建設問題のシンボル的な存在になっているそうです。

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【吾妻渓谷③】

国土交通省の「八ッ場ダム工事事務所」のHPによると、
八ッ場ダムは、堰堤の高さ131m・幅336m、貯水量1億㎥の重力式コンクリートダムで、
利根川水系では、高さでは4番目、貯水量では3番目の規模だとか。

建設の目的は、主に下流域の洪水対策。
昭和22年(1947)のカスリーン台風による大被害が、計画の契機となったそうです。

また、年々増え続ける首都圏の水の使用量増大に対応する為の水資源開発も兼ねているとのこと。
利水計画策定にあたっては、利水基準年を昭和35年(1960)として、
平均5年に1度の割合で発生する渇水に対処出来るように計画されているそうです。

しかし、50年近くも前に計画されたダムが、現在も本当に必要なんでしょうか?

田中康夫氏は、長野県知事時代に脱ダム宣言で一世を風靡しましたが、
私は何が何でもダムは反対という立場ではありません。
あくまで、ダムが必要とされる理由と強いられる代償の釣り合いの問題だと思います。

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【吾妻渓谷④】

この近辺はイヌワシ、クマタカ等の希少猛禽類の生息地。
工事事務所によれば、専門家の指導を受けながら詳細な調査を実施し、
生態系に配慮した工法を採るとの事ですが、完成後については何もありません。

その後の水質変化は?水量変化は?
この事だけでも、生態系に与える影響は計り知れないものがあると思います。

言うまでも無く、吾妻渓谷は草津白根山などの火山と、
吾妻川が何億年もかけて作り出した自然の宝庫です。

相当に逼迫した事情出なければ、一旦壊れてしまえば元には戻らない貴重な財産を、
近視眼的な考えで壊してはなりません。

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【吾妻渓谷⑤】

また、貴重な自然への打撃だけでなく、
多くの人々の生活を直撃するダム計画でもあります。

地元・長野原町の水没世帯数はなんと340世帯。
前代未聞の数字だそうです。

800年の歴史を持つ川原湯温泉街の旅館17軒と商店17軒、
JR吾妻線も国道145号もすべて水没してしまいます。

このような代償を払って、50年前の計画に沿って今、
ダム建設をする必要があるとは、私には思えません。

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【吾妻渓谷⑥】

ダム推進派の方々は、下流域の洪水調整を訴えているようですが、
50年前と違って、河川の改修や防災対策等で以前より洪水の脅威は減っているはず。
水需要にしても、本当に渇水期と言えるのは年間の数日間。
それも、給水制限でやり繰りできる程度のもので、それほど逼迫してはいません。

「沢の水を引いた簡易水道を大切に使って平穏に暮らす山里が、
水を大量に使って快適な生活を享受している都会のために、
なぜ一方的に犠牲を強いられるのか。」

これは、ダム建設計画が発表された当時の地元の方々の声です。
もっともな意見だと思います。

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【吾妻渓谷⑦】

また、「恩恵」を受ける下流域・首都圏の人々も、本当にダムを望んでいるのでしょうか。

八ッ場ダム自体の事業費は4,600億円。
この時点で、日本一高価なダムとなります。
さらに、地域振興事業などを含めた総事業費は5,850億円にものぼります。

しかも、これらの事業費のほとんどは起債によってまかなわれるので、
利息をも含めた国民負担の試算はなんと総額8,800億円!!

事業費8,800億円の内訳をみると、150億円が受益者負担、
4,050億円が地方税と水道料金、残りの4,600億円が国税として全国民が負担します。
ちなみに、地方の負担の内訳は東京都1,300億円、埼玉県1,205億円、千葉県750億円、
茨城県400億円、群馬県380億円、栃木県15億円となっています。

莫大な借金を抱える国や自治体に、さらに多額の費用負担が強いられます。

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【吾妻渓谷:葉っぱ】

本当に必要なのは、ダムか節水か?
ダムの本体工事は未着工ですが、すでに1,300億円がつぎこまれています。
しかし、それが無駄金になったとしても、中止する勇気が必要ではないでしょうか。

現在、八ッ場ダム建設に対する公金支出差止を求める住民訴訟が、
先述の1都5県の地方裁判所で審議されています。

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コメント

素晴らしい画像と共に、深く考えさせられました。
東京都の水瓶と言っても、果してそれ程必要なのか疑問です。工業用水として地下水の汲み上げが問題になって、このダムは絶対に必要だと言われてきましたが、現在は駅の地下が浮いて来るほど地下水は余ってるそうです。
長い戦いで住民はもう疲れてしまい、既に移転準備に動き、工事も後戻りは出来ないでしょう。群馬県民として、余りにも無関心だったと感じています。
吾妻の自然が消え、草津の上がり湯と言われてきた、伊香保の奥座敷と言われてきた川原湯温泉も消え、多くの歴史的遺産も水没してしまいます。残念です。その償いとして、群馬県と東京都民は永遠に代償金を支払い続けなくてはなりません。ダムを守るために、大量の中和剤をダム湖に撒き、湖底のヘドロを除去しなければ成りません。片品ダムは、その中和剤の金額が高額で、永遠に続く事から中止になったと聞きました。
現状で問題もなく50年間来たのに、どうして今更無理をしてと思います。
主に戦国時代の様々な跡が残ってるそうで、古い伝説なども多く、もう少し知りたいのに、足が悪くて残念です。

投稿: デンスケ | 2007年11月10日 (土) 10時59分

素晴らしい渓谷美ですね
此れが無くなっちゃうのですか???
あぁ~なんと勿体ない

投稿: warasi | 2007年11月10日 (土) 11時11分

只見川の田子倉ダムに行ったときに、日本のダムのことを調べておどろくようなことを知りました。
田子倉はちゃんと稼働しているようですが、なんと現在の日本のダムの中には(中規模のものが多いらしいけれど)そこにヘドロや泥がたまって稼働していないものが多数あるということです。
これについてはデンスケさんのおっしゃるとおりですね~
50年も手を付けていないのに、今更なんで?という感じです。裏で何か画策している人たちがいらっしゃるのでしょうか?
地方の活性化のために公共事業を・・・というのは、富国のために戦争をした明治時代とまったく同じような発想だと思います。

投稿: きょんち | 2007年11月11日 (日) 07時44分

深い渓谷の感じが良く表現されていて、大変参考になりました。
この渓谷がダムの底に沈んでしまうかも知れないとか。本当に必要なダムなのかどうか、後になって反省しても手遅れとなってしまいますので、真剣に議論してもらいたいものです。何とか回避出来ればいいですね。
湯の畑の写真も拝見しました。

投稿: kazuo | 2007年11月11日 (日) 10時44分

デンスケさん
お返事遅れまして、恐縮です。

まだ、本体工事には未着工との事。
これまでに投じた巨額の税金の問題はありますが、
環境への影響や地元の生活者に対する負担、
ランニングコストなどを考えると、
私も中止すべきだと思います。
たかだか、2ヶ月前に群馬に移り住んだ者が、
生意気かもしれませんが、まだ間に合うのではないでしょうか。

投稿: yufuki | 2007年11月12日 (月) 21時16分

warasiさん
コメント有難うございます。

この素晴らしい渓谷美が、水没!
考えただけでも、本当に悲しくなります。


投稿: yufuki | 2007年11月12日 (月) 21時19分

きょんちさん

私利私欲を抜きにして、純粋に、計画後50年たった現在も、
本当にこのダムが必要だと考えている人が何人いるのでしょうか。
無駄、無茶を承知の確信犯だから性質が悪いと思います。

投稿: yufuki | 2007年11月12日 (月) 21時22分

kazuoさん
現在、1都5県の地方裁判所で審議されている、
住民訴訟の場で、司法が良識ある判断を下すことを、期待してやみません。
しかし、日本での行政訴訟で、住民側が勝訴するのは至難の業。
心配です。

投稿: yufuki | 2007年11月12日 (月) 21時27分

魅力あふれる写真を拝見させていただきました。

投稿: Sichi-Ri | 2007年11月15日 (木) 21時15分

Sichi-Riさん
有難うございます。

せっかくコメントを頂きながら、
お返事が大そう遅くなりました。

これの懲りず、またお立ち寄りください。

投稿: yufuki | 2007年11月24日 (土) 01時27分

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