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2006年9月15日 (金)

備中まほろば

060915cocolog

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岡山県高梁市成羽町の標高550mの山嶺に、吹屋(ふきや)と呼ばれる地区があります。

ここは、江戸時代から昭和の初期にかけて、中国地方随一の「銅」の街として、大変栄えたところです。

天和元年(1681)、大坂の有力商人泉屋(後の住友)が、天領であった吹屋の銅山、吉岡銅山の採掘を請け負いました。

このときから幕末までの約100年間で、吹屋はその繁栄の礎を築きました。

それまでは、地元の「村稼ぎ」程度の採掘でしたが、泉屋は鉱山の最大難事である排水工事に着手し、

貞享3年(1686)には疎水大坑道を完成させました。

これにより吉岡銅山の産出量は飛躍的に増加、銅山で働く人は1000人を越え、

賑やかな鉱山町が形成されてゆくことになります。

明治6年(1873)には、岩崎弥太郎(後の三菱)が吉岡銅山の経営に進出し、

巨大な資金力で先進技術を導入し、難事の排水問題を解決するとともに、

水力自家発電による選鉱・精錬をはじめ、運搬専用のトロッコ軌道を敷設するなど、鉱山の近代化を図りました。

更なる発展をとげた吉岡銅山は、最盛期の大正時代初期には従業員数1200人の大鉱山となり、

吹屋の街にも、社宅や病院をはじめ劇場までが設けられ、大いに賑わいをみせました。

また、江戸時代末期からは弁柄(ベンガラ)という特産品の生産が重なり、

吹屋は「弁柄の街」としても全国に知られることとなりました。

弁柄とは、九谷焼や伊万里焼などの陶磁器の顔料や、弁柄格子に代表される建築の防腐塗料として、

幅広い用途に使われる赤色顔料で、その昔は中国から輸入された弁柄が使われていました。

弁柄の大元は、銅山からでる硫化鉄鉱ですが、宝暦元年(1751)に、この硫化鉄鉱から、

弁柄の直接の原料となるローハ(結晶硫酸鉄)の凝結に全国で始めて成功したのが吹屋でした。

以後、このローハを原料に、高品質の弁柄を大量に生産することが可能になり、

吹屋は、全国でただ1ヶ所の弁柄製造・販売の街としても栄えることになりました。

しかし、最盛期の大正時代から程なく、第一次大戦後の不況、それに続く世界大恐慌を契機に、

吉岡銅山は昭和6年(1931)に一旦は閉山となります。

第二次大戦後、細々と操業が再開されましたが、昭和47年(1972)には永遠に閉山となりました。

また、昭和30年代には、ローハの代わりに化学肥料生産の副産物を原料にした新製法が開発されると、

これまでの伝統的製法による吹屋の弁柄は衰退し、製造業者の多くは廃業に追いやられました。

昭和49年(1974)、最後の製造業業者である田村家(福岡屋)の廃業により、吹屋の弁柄生産は幕を閉じました。

旧街道沿いには、弁柄格子に赤銅色の石州瓦、

入母屋妻入り型や切妻妻入り型の印象的な商家が立ち並び、往事の繁栄が偲ばれます。

これらの街並みは、文部省選定の重要伝統的建造物保存地区に指定され、保全・保存が図られています。

その結果として、歴史的な建物や街並みは後代に残るでしょうが、人々の暮らしは果たしてどうでしょうか。

銅山と弁柄製造の街・吹屋は、昭和40年代に入ると激しい過疎化にみまわれ、

その建物の多くは空き家となっています。

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コメント

私も、先月、友人を案内して3度目の訪問をしました。
本当に素晴らしい”遺跡の町”ですね。なぜ、ここを観光ビジネスが素通りしているのか? 不思議です。

いつも変わらぬ素晴らしい写真と調査の行き届いた絵解きコメント、感銘深く拝見しました。友人達に、岡山を知りたけば、こちら、と、いつも紹介させていただいております。

また、岡山の“秘境”を発掘してご紹介くださいますよう切望いたします。ありがとうございました。

投稿: 銭本三千年 | 2006年9月15日 (金) 22時57分

zensan先生、いつも有難うございます。
吹屋の町、ホントに閑散としていました。
生活の場としての機能が、ほぼ停止してしまった町は、
確かに”遺跡の町”でした。

ご友人に当方のブログ、お勧めいただいたとの事、
重ねて有難うございます。

投稿: yufuki | 2006年9月16日 (土) 01時26分

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